外来語をアレンジして日本語の一部にしてしまう和製英語(外来語)は多い。それが単語の変化だったり発音だったり、アメリカやイギリス本国では使わない用法や発音でも日本ではアタリマエに使われている例である。探してみると結構多いから面白い。
◆シュークリーム
…ご存じ、あのフワフワしたシュー皮の中にカスタードクリーム等を入れたお菓子。
随分前の話だが、ボストンのとあるレストランで必死にこれを注文している中年男性(日本人)を見掛けた事がある。その御仁は「シュークリーム」という単語(発音)がアメリカでも通用するものだと勘違いしていたらしく、「シュークリーム」を盛んに連発している。困り果てた支配人が「あなたは今ここ(レストラン)で本当にそれが必要なのですか?」と訊ねると、その御仁は「私の夕食後にはそれとコーヒーが欠かせないのだ」という。笑いを堪えてその一部始終を見ていたら、くだんの支配人は複雑な表情を浮かべながら、その御仁の前のテーブルに静かに靴墨(shoescream/シューズクリーム)を置いたのでありました。
シュークリームは
ちなみに、「シュー/chou」とはフランス語でキャベツや白菜などの結球野菜の総称だが、丸く絞り出して焼いた生地を結球したキャベツに見立てて「シュー」と呼ぶところからこの名称となったらしい。
◆ビタミン
vitaminをビタミンと発音したところから来たのだろう。正確にはヴァイタミンと発音するのだが、日本ではビタミンと言わなければ通用しないだろう。vitaminがヴァイタミンだと認識されるには今のペースだと後100年掛かるかもしれない。
◆モアベター
本来英語にこういう用法(more+better)はない。しかし日本では完全に定着してしまっている和製英語で、もはや日本語と云ってもいいだろう。私は今でも普通に使っている。ニュアンスが分かりやすい和製英語だから便利だ。もちろんメリケン人相手には使わないけれど。
◆ガソリンスタンド
米国ならば
◆ナイター
正しくは
◆ホッチキス
機関銃の発明者である
この文房具自体の発明者はベンジャミン・ホッチキスではなく、綴じ針が連続して打ち出される構造が機関銃の構造と全く同じことからの連想で付いた名称とされる。この文房具を製品化したアメリカのE.H.ホッチキス社は、ベンジャミンの弟エーライ・H・ホッチキス氏とも言われている。
米国ではホッチキスと言っても通じないだろう。ステープラー(stapler)というのが本来の呼び方だからだ。逆に日本の文具店で「ステープラーを下さい」と言っても、若い店員さんのほとんどは「‥‥???」となるだろう。
日本のJIS規格でも「ステープラー」という商標名として扱われていたが、現在は一般名詞化しているという事で文房具としての商標権はなくなっているらしいが、ホッチキスとしか呼ばれなくなった事が案外ホントの理由だったりして。
ちなみに、ホッチキスの替え針を「ホッチキスの弾(たま)」と言う事があるが、機関銃の自動弾装から由来する呼称だそうだ。物騒な呼び方である。
……こんな具合。日本に定着して日本語になってしまった誤用外来語は意外に多い。面白いのは、上にあげた例の言葉を使うと「英語にその用法はない」とかチェック入れて来るウザったい人間がたまに居る事だ。もはや完全に日本語になってしまった誤用法だと知った上で使っている身としては、まさに
「一生懸命」などの誤用慣用句と和製英語は違うのである。
和製英語の話から逸れるけれど、一生懸命ではなく
「一生懸命」という誤用慣用句はメディアを始め世間に氾濫しているが、私は自分自身で使わないだけで「その表現はマチガイですよ」などと人様にいちいち指摘する事はない。