思いがけずに頂いた手作りシュトーレン。クリスマス時期にドイツで食べるケーキで、クリスマスの日まで少しずつカットして大切に食べるものだ。ドライフルーツが贅沢に使われたずっしりと重いシュトーレンは、そんじょそこらの店で気軽に入手出来るようなものではない。
シュトーレンなるものを初めて食べたのは30年以上前。1981年に西ドイツ ( 当時 ) のバイエルン州トゥツィンクで食べた。あのブラームスの避暑地であり、ピアニストのエリー・ナイの記念碑 ( 2006年5月にアップした過去記事参照 ) があるトゥツィンクだ。現地の一般家庭で手作りされたシュトーレンは、レーズン入りのパウンドケーキしか知らなかった私には青天の霹靂だった。身も凍る寒さの12月のトゥツィンクで、ホットワインとともに頂いたシュトーレンの何と美味かった事か!
以来、12月に欧州 ( 特にドイツ圏 ) を公演する時の楽しみは各地のシュトーレンを味わう事だった。いずれも一般家庭の手作りシュトーレンで、店で買えるようになったのはベルリンの壁が崩壊してだいぶ経ってからだった。ケルンのパン屋で見つけたシュトーレンは他のパンやケーキに比べてびっくりするほど高額だったが、ずっしりと重量感のある本格的なシュトーレンで、ほとんどが受注製作だという事だった。材料を吟味してドライフルーツやナッツ類を贅沢に使って製作するシュトーレンは、店にとっては割りに合わないケーキなのだという。
さて、このたび私の手元に贈られたシュトーレン。・・・・もう
昨夜は銀座ピアノ倶楽部の年内最終レッスン。前日までの厳冬の仙台での疲労が一晩経っても抜けず、食欲も出ず・・・・そんな中でのレッスンだったのだが、帰宅して2カットのシュトーレンを口にした瞬間に疲労がスっと抜けた。温かい飲み物とこのシュトーレンの上品な甘味と旨味がどれだけ私のテンションを修復し、癒してくれた事だろう。しみじみと頂きながら 「 ・・・・幸せだなぁ 」 とジンワリ涙目になった。
こんな素敵な贈り物を製作して下さった人に、私はこれから何の恩返しが出来るだろうか。大切な人の真心を頂きつつ、壮絶なスケジュールだった今年もようやく暮れて行く。私はやっぱり幸せ者でありますよ。