昭和初期から終戦直後までのごく短い時期に日本のピアノ界で注目されたピアニスト、井上園子(いのうえ そのこ 1915年/大正4年・東京~1986年/昭和61年・同地)の貴重な録音がある。大正15年、11歳の時にモーツァルト・ピアノ協奏曲第23番でデビューして注目され、14歳でウィーン国立音楽院に留学してエミール・ファン・ザウアーやパウル・ヴァインガルテンに師事、18歳で1933年ウィーン国際音楽コンクール(この時の第2位にはディヌ・リパッティがいる)に本選まで出場してディプロマを受賞して国際的にも注目された邦人ピアニストである。国際コンクールに出場して本選にまで進んだ最初の邦人ピアニストでもあった。
健康問題を理由として戦後すぐに演奏活動から引退し、指導に専念した。日本音楽コンクールの審査員としても名前が確認出来る。
YouTube ⇒ 井上園子(piano):チャイコフスキー「トロイカ」(1936年録音)
YouTube ⇒ 井上園子(piano):グリーグ「春に寄す」(1936年録音)
SPレコードによる再生だが、再生状態は素晴らしい。それ以上に、昭和初期にこれだけ瑞々しいピアニズムを持つピアニストが存在した事は驚きである。また、井上園子のSPレコード盤自体が大変貴重で、滅多に市場に出回る事がない(出ても驚くほど高値)。なかなか録音を聴く機会がないピアニストだ。(YouTubeにアップされた方に感謝申し上げたい。)
SPを聴くと、チャイコフスキー「トロイカ」は提示部(12~15小節目)と展開部(同型部分)が一部省略されている。当時の日本の楽譜事情なのか、録音時間の制約上そうしたのかは判らないが、ピアニストとしては
なお、井上園子の詳細については 『 一世(issei)オフィシャルサイト・総合資料室 』 の